着物バイトが「きつい」と言われる理由を、雇う側だった経営者が本音で解説する

着物業界のこと
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こんばんは。ヒロシです。

このブログのアクセス解析を見ていたら、「着物 バイト きつい」で検索して来てくれている人が結構いることに気づきました。

わたし自身は着物屋でバイトをしたことはありません。

いや、はじめの頃は自営業の父の手伝いをしていたので、バイトみたいなもんでした。

時給で働いたわけではなく、なんとなくお駄賃を貰うような働き方です。

その後、夫婦で10年間、着物屋を経営していた側です。父から離れて営業しました。

一応、小さい会社ですが、雇う側をしました。

なので「バイトのリアルな体験談」は書けません。

でも、逆に「なぜバイトがきついと感じるのか」を、

雇う側の構造から説明することはできるんじゃないかと思って、この記事を書いています。

着物バイトは「接客」じゃなくて「営業」

着物屋のバイトって、実質は営業マンだと思います。

レジ打ちや品出しだけしていればいい仕事なら、大して大変ではないはずです。

でも実際は、口には出さなくても「売上を作れ」という空気を、常に感じさせられる仕事です。

お店にお客さんが来たら、ただ「いらっしゃいませ」と言って待っているだけでは許されません。

着物屋にとって、来店されたお客さんは「販売のチャンス」です。

何かしら提案する、勧める、興味を引く。それができて初めて「ちゃんと仕事をしている」と評価されます。

わたしから言わせると「バイトに売上を求めるな」ですが、求めたくなる気持ちもわかります。

わたしも以前、売上を従業員に求めてしまい、イライラして怒ってしまう場面がありましたから。

経営者失格です。辞めて正解でした。

バイトするなら、「売上を上げろ」と、求められないバイトを選んだ方がいいです。

バイトなんだから、時間給ですから。その時間、そこにいてくれさえすればいいって仕事を選んだ方がいいです。

お客様を見極める難しさ

着物屋に来店するお客さんには、大きく2種類います。

本当に着物が欲しくて来た人

なんとなく見てみたいだけの人

あとは悉皆を頼みたい人とか、そんな感じなんでしょうけど。

この2つを見分けるのが、本当に難しいです。

ふらっと見に来ただけの人に、商品を勧めすぎると「押し売りされた」と嫌がられます。

かといって、本当に欲しくて来た人に何も勧めなければ、

「感じの悪い店員だった」と思われて、売上にもつながりませんし、再来店にも繋がらない。

お客さん側の思考を読むと、「欲しい着物があったら買いたいけど、買いたいと思ったら安くしてくれないから、買いたくなさそうにしながら、なるべく値引きしてもらって買う」といった手を使う方もいますし。お客さん側も、売り込まれるのを防ぎながら着物屋に見に来たり、誰かの紹介とか付き合いで仕方なく来店したりもあるのです。みんな、誰かしらと繋がっていて、付き合っているから、色々な人間関係の中で、それぞれの人の思惑とかいろんなものが混ざりながら、着物屋に来店したりするのです。

そんな社会で、バイトという立場でいろいろ判断しなければいけない。(それ、バイトの仕事なの?)

しかも、外すと数字に響く。これがしんどい理由のひとつだと思います。

「商品を勧めないのはサイテー」という業界の空気

着物業界には、「せっかく足を運んでくれたお客様に商品を勧めないのは、商売人としてサイテー」

という空気がありました(今はどうかわかりませんが)。

わたし自身も、そう訓練されてきたところもありますし、だんだんそう思うようにもなりました。

お客さんのために、本当に良いと思うものを提案する。それは接客業として大事なことです。

ただ、この空気が強すぎると、「売らなきゃいけない」というプレッシャーに変わります。

バイトという立場で、この空気の中に放り込まれたら、しんどくなるのは当然だと思います。

ノルマを達成できなければ、自分の接客が悪かったのか、そもそも今日はそういうお客さんが来なかっただけなのか、判断もつきにくい。

売上が上がらない日が続けば、メンタルが削られていくのも無理はありません。

バイトにまで売上を求めるのも、店長が、上から「売上を作れ」と言われてるからでしょう。

その人は、さらに上から「売上を作れ」と言われてて、あー、イヤイヤ資本主義です。

昔は、着物屋の従業員にも着物を買わせて、家族にも買わせて、親戚にも買わせて、友人にも買わせて、売上を作ってきた時代もありましたもんねぇ。そして、もう着物を周りに売れる人がいなくなると従業員は辞める。そして、あたらしい従業員が入れば、また同じように従業員の周りに売っていく。使い捨てのコマ、という言葉が昔はありましたが今はどうなんでしょうね。

アパレル関係は従業員がローン組んで買ったりする話がありましたから、もちろん着物業界ももっとあったはずです。

着物屋のバイトにも、着物を買わせているのはあるかもしれませんが、着物好きのバイトさんはちょっと安くで買えたりして嬉しいかもしれませんし、着物好きなら耐えられるのかもしれませんね。(わたしはローン組んでまで欲しいと思えないから無理)

向いてない人は、無理しなくていい

ここまで書いてきて思うのは、着物バイトがきついのは、あなたの接客の問題ではなく、構造的にしんどい仕事だということです。

感じが悪い言葉になりますが、着物の営業が向いてる人は、来店されたお客様を見て「よし、どうやって購入してもらう話に持って行こうか」と楽しめる人たちです。ハンターです。この獲物は俺がいただく、の姿勢です。そういうのが得意な人が勝ち上がるんじゃないかなぁ。勝ち上がったことないので、憶測です。

お客様のどの辺の話を掘っていけば、購入する気分になるか、商品を色々見せながら、熟練の営業マンはとてもお客様をいい気分にさせながら、ちゃんと売上を作ります。そして、アフターケアも徹底しています。

バイトは、時間給で縛られた時間の中でしか責任を持てません。でも呉服業界で大事なアフターケアは、そのバイト時間の外にあります。だとすると、営業成績を正社員と比較されても、納得できないのは当然です。着物バイトで、いい感じに働きたかったら、アフターケアも覚えてできるようになればいい。でも、それ時間外の働きにならない?時給払ってられないのよ、そこに。バイトは時間内しか責任持てないんだから、時間内に責任持てる仕事しか任せちゃダメなのよ。それがズレてる会社があるとすれば、しんどいのはその会社のせいです。

顧客が夜しか家にいないとか、外商ができないと辛いです。売上を上げてくるのはやはり、雇用が守られた営業マン、正社員でしょう。バイトは店内だけでしか働けない。正社員は店舗外でも働ける。自分の実績にできる。

着物バイトを無理に続けて自分を責め続けるくらいなら、その時間そこにいるだけでいい別のバイトを選んだ方がいいと思います。

実際、わたし自身も、この「売らなきゃいけない」というプレッシャーがしんどくて、着物屋を辞めた人間です。

売らないと、お金が入ってこないから当たり前なんですけどね。

詳しくはこちらに書いています。

着物屋を10年して、辞めた理由を正直に話してみる。~商売するために必要なことはなんだろう~
「着物屋を10年経営し、夫婦で自転車操業と向き合った末に、借金なしで廃業した本音の記録。辞めて良かったこと、まだ答えの出ないこと。

もし今、着物バイトのプレッシャーに悩んでいるなら、それはあなたが弱いからではなく、この業界の構造そのものが、そうなりやすいということを知っておいてもらえたらと思います。着物業界に限った話ではないかもしれませんが。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いた人
ひろし

2008年から10年続けた着物屋を畳みました。
振り返っても、向いてなかったなと反省です。
未練があるのかは自分でもまだ分かりません。
現在はアルバイトをしながら時折、父の着物屋を手伝っています。
10年間の着物の商いで勝手に残っているものがあり、それを吐き出しています。
吐き出したものが、誰か読んだりしてくれたらうれしいです。

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