(↑…小裂を付けて、この色に近づけて下さいと染め屋に反物を送り仕上がったもの。)
着物屋は、こんなお仕事もあります。
それは「お客様のお宅に眠っている反物を生かすこと」
昔の話を父から何度も聞いたのですが、
父が勤めていた呉服屋は、
年末年始になるとお客様宅に白生地を送っていたそうで。
「初荷」と言って、
新年明けたら染め見本を持ってお客様宅へ伺い、届いた白生地を
何色の着物にしましょ?と新年の挨拶も兼ねて回ったそうです。
で、そんな感じでお客様は白生地を結構買っていた
(買わされていた?)のでしょう。
その白生地が眠っていることがよくあります。
今回のお客様宅でも白生地が出てきて状態が良かったので、
お客様に色を選んでもらって染めました。無地の着物に仕上がります。
下の写真は裏地(八掛)の色選び作業。
反物幅が狭かったけど、こちらのお客様には裄が足りそうだったので
着物に出来るなと思いご提案させていただきました。
ただのモノとして見れば、新品で買った方が安くつく場合の方が今は多いでしょうね。
でも、この無作為なかんじ、自分の力ではどうしようもないかんじ。
いつの時代に誰が買ったか、わからないけど この家から出てきたんだから
血の繋がりか若しくは親類が関わって<この反物>がここにあるのだ。
<この反物>はどういうわけか、今、この時に目の前に現れた。
そこに着物を着る人がいて初めて、<この反物>は生きるのだ。
自分じゃなきゃ、<この反物>は蘇らせることはできないかもしれない。
これは「ただ、売っているだけのモノ」では体験できないんです。
自宅か、じいちゃんばあちゃん家でそんな出会いをしたら、ワクワクしますよ〜。
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